フィドロサミル学園

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ショート・ストーリー 星空 遥 1

あぁぁ、葵くん、かっこいいなぁ……

今日の4時間目は日本史。うちのクラスはラッキーなことに、ジークフリート先生が大学から時々来てくれる。今日は貴重なジークフリート先生の授業だ。葵くんは熱心に授業を受けている。私も授業には集中しているつもりなんだけど、ついつい、葵くんの横顔に目が行ってしまう。先生の方向と彼の席が近いのだ。

私と葵くんが初めて出会ったのは、小学5年生のときだった。公立の小学校で、5年生のクラス替えのときに初めて同じクラスになったのだ。小学校のときからあんまり男子とは話をしたりするのは苦手だった。でも、葵くんは、ぎこちないながらも、なんというか、雰囲気やオーラが、とても好きで、男子の中では一番話しやすかった。その頃はまだ恋とは呼べなかったと思うけど、気がついたときには、私は葵くんのことが大好きになっていた。

実は「葵くん」なんて本人に対して呼んだことはまだない。小学校のときからずっと「蛍光院くん」だ。本当は下の名前で呼びたいんだけど、恥ずかしくて、もうほんとうに何度も呼ぼうとしたんだけど、そのたびに顔が赤くなるのがわかって「蛍光院くん」になっちゃう。あぁぁ、いつになったらちゃんと、「葵くん」って呼べるのかなぁ……。

そんな私にも、絶対に決めていることがある。私は、高校を卒業する前に、絶対に葵くんに告白する。英語のSLにも立候補できたんだ。授業を担当するときもドキドキしちゃってまだまだダメダメだけど、まずは恥ずかしがり克服の第一歩は踏み出せた。「英語が得意になりたい」。彼の言葉が、私を後押しした。私が英語SLになれば、彼と接する機会も増える。あぁぁ、なんか不純な動機だけど、神様、そこは許してほしいです。ちゃんとSLの仕事はやるから、ね。

あと2年ない……のか……。告白……できるかな……、できるよね?

本当に、大好きなんだよ。

ふと、葵くんがこちらを見たので、私は慌てて目をそらせた。あぁぁ、絶対今顔赤くなってるよ……。

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